『The TASTER』シリーズ第10弾!! 谷嶋元宏氏インタビュー

著名なテイスターに数あるサンプルの中からテイスティングと選定を依頼するシリーズ『The TASTER』の第10弾。
今作は、Bar Fingal のオーナーであり日本屈指のテイスターの1 人として知られる谷嶋元宏氏をお迎えして、谷嶋氏が選定したトーモア蒸溜所の魅力やテ イスティングについて想いを伺った。


Bar Fingal - 谷嶋 元宏氏

谷嶋 元宏

1966年京都府生まれ。高校教員を経て、東京・神楽坂にバー「Fingal」を開店。2015 年、日本の洋酒文化・バーライフの普及・啓蒙を推進する「酒育の会」準備室を設立、現在に至る。JSA 日本ソムリエ協会認定ソムリエ。

 

Bar Fingal

東京都新宿区神楽坂3-1 美元ビル1F
03-3235-2378
19:00 ~ 02:00 日曜・祝日休み

 



トーモア蒸溜所について、どのような印象をお持ちでしょうか?

 トーモアはスペイサイドで20世紀になって初めて建設された蒸溜所です。1959年生産開始で、もうすぐ60年ほどの比較的若い蒸溜所ですね。一度だけ蒸溜所へ行ったことがありますが、新しい綺麗な設備でスペイサイドでも大きな街道沿いの高台にある蒸溜所だなという印象で、何となく教会の雰囲気に似ている気がしました。

 街道沿いに建っていますが、蒸溜所のすぐ裏には仕込み水に使われる池があり、見学の際に、その池に筒を放り投げてウイスキーの色と同じピートが溶け込んだ茶色の水を汲んでもらいました。その場でウイスキーとトワイスアップで飲んで非常に美味しかったのを今でも鮮明に覚えています。まさに仕込み水ですから、日本で飲むトワイスアップとは全然違ってストレスが全く無く贅沢な飲み方でした。スコットランドの気候・風土も含めての味だったと思います。

 

トーモアと聞いて、記憶に残っているボトルはありますか?

 比較的マイナーで、それほどリリースが多い蒸溜所ではないので難しいところですが・・・ラベルに水彩画で風景が描かれている10年でしょうか。まさにこの絵画のように優しいタッチの酒質なので、綺麗で柔らかでスペイサイドらしい印象です。今は12年ですが、あまり個性を前面に出す蒸溜所ではないので昔と比較しても大きな変化は無い気がします。

 トーモアは、グレンバーギやミルトンダフと同様にバランタインの原酒で、またロング・ジョンの原酒でもありますから、基本的にオフィシャルとしてのボトリングではなくブレンデッド用の側面が強かったのもマイナー蒸溜所という印象を持たれる理由なのかもしれませんね。見方を変えると、あまり強い個性は無いけど優しく綺麗に仕上がっている点がブレンデッド用に使い易かったのかもしれません。

 

今回の「テイスター」ボトルについて

 トーモアには良い印象を持っていましたので、比較的マイナーな蒸溜所ではありますが期待していました。 香り立ちは28年熟成なので非常に良いですね。度数も自然と落ちてきている印象です。品良く華やか、熟した果実、オレンジや黄桃、ドライアプリコットのようなニュアンスを感じます。また、爽やかな柑橘系やフレッシュなミントっぽさもあります。優しいけど複雑な香りが心地よく広がります。奥の方から樽由来のバニラやシナモンのニュアンス、麦芽の優しい甘さが感じられます。スペイサイドらしい香りですね。

 味わいも本当にストレス無く楽しめるスペイサイドらしい味わいですよね。もちろんカスクなので、しっかりと力強さもありながらですが、熟した果実の甘みや酸味、心地よい甘みや渋みといった樽のニュアンスが感じられ飲み疲れない印象です。我々はどうしてもカスク慣れしてしまっているので、もしかしたら物足りない方はいるかもしれませんが(笑)、穏やかな中にも複雑な美味さがあります。後半は、蜂蜜のような甘さも出てきて非常にまとまっている印象です。時間を置いて開いてくると爽やかさよりも蜂蜜やフルーツ感がしっかりと出てきますね。

 

谷嶋さんが考えるテイスティングとは?

 テイスティングは、立場によって求められることが違ってくるかと思います。ブレンダーだとサンプリングする原酒の熟成具合などをチェックして、それぞれの原酒の香りや味をどのように配合していくかをテイスティングしなければいけませんよね。
 私のようにバーテンダーだと、基本的にお客様にご提供する際に、このボトルの個性がどこにあるのかをご説明できるようにするのが目的の1つです。もちろん自分の好みはありますが、やはりお客様によって好みが違いますから、主観的な部分ではなく客観的にお伝えしています。スクールでは立場が違い、愛好家の方々へよりウイスキーを愉しんでいただきたいという観点になります。

 ウイスキーは”造り”がそのまま味に反映されます。例えばピートレベルや麦の種類、樽の選定といった、造り手の求める味わいが具現化できるお酒ですので、そういった”造り”と味わいを極力リンクして理解していただけるようにお話しています。そうすることで製造への興味が出てきたり、何かのウイスキーを飲んだときに製造に関する知識を思い浮かべたりすることができるわけです。単純に美味しいとか、1つ1つの味の表現も大事ですが、それよりも「こういう造りをするから、こういう味わいになる」ということを連想できると、よりウイスキーが楽しくなります。もちろん単純ではありませんが、これだけ多くの蒸溜所があり個性が違うわけですから、少しでも造り手を想像できると他のお酒には無い楽しさが深くなっていきますね。


 また、例えば単純にピート香と言っても人によって感じ方が違います。これはピート香由来を分類することが大事です。消毒薬や薬品香だったり、黒土やオイリーで重い香りだったり、ヨード香だったり・・・。その中で、ある人はスモークの強弱で判断したり、またある人は消毒薬の強弱で判断したりと、人によってピートの強弱を判断する要素は違ってきます。ですので、単にピート香といっても様々な要素で形成されていることを知り、それを頭の中で整理していけるとテイスティングは上達していくと思います。

 

テイスティングは難しいと感じている方も多いと思いますが・・・

 ワインでもそうなのですが、テイスティングをしようと思ったら日頃から意識的に香りを嗅ぐことが大事ですね。普段は強い香りを嗅ぐと無意識的に香りを遮断してしまうのですが、例えばスーパーで果物や野菜の香り、街を歩いているときにふと感じた香りを意識して覚えていくと、次第に単語が出てくるようになります。これはもう訓練しかないのかなと思います。

 あとは他の人の表現を聞くことで、その香りに気付くことが多いですね。ですので、テイスティングをやり始めの方や不慣れな方には1人でテイスティングするのは難しいかもしれません。いま定期的に開催している酒育の会での基礎講座や、何人かでテイスティングをすることで他の人がどのように表現しているかを知ることが上達への1つの道なのかなと思います。

 

今回の「テイスター」ボトルの愉しみ方

ゆっくりと愉しんでいただきたいですね。最初の1杯というよりも2杯目~3杯目に。繊細ですが樽のニュアンスや複雑さもしっかりと表現されていますので、じっくりとお愉しみいただければと思います。


 

 

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ザ・テイスター
トーモア 1988 28年 49.3%

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Tormore 1988 28YO 49.3%

シリーズ第10弾!
「Bar Fingal」谷嶋元宏氏 選定

著名なテイスターに数あるサンプルの中からテイスティングと選定を依頼。
その第10弾を迎える本ボトルは、Bar Fingalのオーナーでもあり日本屈指のテイスターとしても知られる谷嶋元宏氏がセレクトした華麗なスペイサイドモルト「トーモア」をお届け。
比較的マイナーな蒸溜所でありながらも、端正で華やかなスペイサイドらしさに溢れるボトルとなっている。

[テイスティングコメント]
華やかな熟した果実、オレンジや黄桃、ドライアプリコット。
樽由来の心地良い甘みや渋みがバニラやシナモンのよう。麦芽の優しい甘さ、穏やかな中に複雑さがある。

情報

原産国:
スコットランド
地域:
スペイサイド
ブランド:
ザ・テイスター
メーカー:
スコッチモルト・セールス
銘柄:
トーモア
カスク:
バーボン樽
ビンテージ:
1988
熟成年数:
28
アルコール度数:
49.3
容量:
700ml

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