バーで提供するシェリー

 

バーテンダーに聞く 第1回 は、
「バーで提供するシェリー」というテーマでお話を聴かせていただきました。

STAR BAR GINZA 店長の山崎 剛氏とシェリー・ジャパン株式会社 代表取締役 渡邊 俊彦氏です。渡邊氏が聞き手となり、山崎氏のシェリーに対する思いを対談形式で聞かせていただきました。


  • STAR BAR GINZA 店長
    山﨑 剛 TSUYOSHI YAMASAKI

    第1回 シェリー・カクテル・コンペティショングランプリ
    第7回 ベネンシアドール公式称号資格認定試験最優秀賞
    日本バーテンダー&ミクソロジスト学院 講師


  • Bar de Ollaria スーパーバイザー
    渡邊 俊彦 TOSHIHIKO WATANABE

    シェリー・ジャパン株式会社 代表取締役
    第2回ベネンシアドール公式称号資格認定試験 最優秀賞

 

対談の様子

渡邊:私は63歳の定年まで帝国ホテルで勤めていたんですが、あるフレンチの巨匠から日本進出の手伝いをしてくれないかと頼まれて、しばらくミシュラン2つ星のフレンチレストランの立ち上げに携りました。
山崎さんは経歴にある通り、シェリーにも精通したバーテンダーとしてご活躍されています。
今回は「バーで提供するシェリー」というテーマでお話を伺いたいと思います。
そもそも「シェリー」とひと言でいっても辛口から甘口までの幅が広いワインです。お店での品揃えについて、お話を伺えますか?

山﨑:はい。STAR BAR GINZAでは、フィノを2種類、マンサニージャ、アモンティリャード、オロロソ、クリーム、モスカテル、ペドロ・ヒメネス(P.X.)を常時提供しています。
また定番の商品とは別に、特別なシェリーやスクールで使用するシェリーなどを何種類かストックしています。

渡邊:一般的なオーセンティック・バーと比べてかなりボリュームのある品揃えですね。それぞれの提供方法、どういったお客様に向いているか、など、お聞かせいただけますか?

山﨑:まず、フィノやマンサニージャ、アモンティリャード。こちらはお店で提供している生ハムに合うお酒としてお薦めしています。もちろん、バンブー、アドニス、シェリー・ソーダなどのベースとしても使っています。アモンティリャードは、重めの食事の後にご来店されたお客様に、ソーダで割って、仕上げにオレンジ・ピールで香り付けをしたカクテルをお薦めしています。
また、バンブーは創作された時代背景を考えて、少しだけアモンティリャードを加え、創作当時の味わいをイメージしています。
オロロソとクリームはもちろんそのままでも美味しいのですが、カクテルとしては熟成したスピリッツと合わせ、官能的なスタア・バー・オリジナル・カクテルとして提供しています。また、P.X.はラム・マンハッタンをリッチで深みのある味わいに仕上げたい時に、少しだけ加えたりします。
甘口のシェリーはデザート・ワインとして提供しています。中でもモスカテルの「エチソ」はとても評判が良くファンが多い銘柄です。

渡邊:バンブーやラム・マンハッタンでのシェリーの使い方は「カクテル」と「シェリー」、どちらにも精通している山崎さんだからこそできるアレンジですね。
オレンジ・ピールで香り付けしたアモンティリャード・ソーダも美味しそうですね。何か美味しくつくるコツを教えていただけますか?

山﨑:フィノやマンサニージャでつくるシェリー・ソーダもそうですが、シェリーとソーダの割合を1:1に近い「濃い」味わいに調合しています。そして最後に少しだけシェリーを上から垂らします。そうすることでシェリー本来の味も感じられ、美味しく仕上がります。

渡邊:なるほど、ますます飲みたくなりました(笑)
では、先ほどお飲みいただいた「カジェタノ・デル・ピノ パロ・コルタド」は、どのようなお客様におすすめしたいですか?

山﨑:ウイスキーをお好きな方やお酒全般に精通している方に喜んでいただけると思います。具体的には、すっきりしたウイスキーからシェリー樽のような濃いウイスキーに移行するあいだの1杯に、いわば変化球としてお勧めしても面白いですね。
また、余韻が長く優しいので、最後の1杯に「濃さ」ではなく、「余韻」と「深み」で心地よく締めていただくのも喜ばれると思います。

渡邊:確かに、味わいや口の中に広がる残り香で癒されますね。
度数も考えると、翌日のダメージまで軽減してくれそうです(笑)
ちなみに、お店ではベンンシアを使ってシェリーを提供することはありますか?

山﨑:はい。ベネンシアすることで、香り立ちが格段に良くなります。冷蔵庫で冷やしているシェリーの場合は温度を上げる効果もあるので、そのためのツールとして使用しています。

渡邊:わずかな温度上昇でも香り立ちが良くなりますし、空気も混ざり込むので、口当たりも滑らかになりますね。シェリーに限らず、より美味しく飲んでいただくために、提供温度を意識するのは大事なことですし、プロとしての腕の見せ所ですね。

山﨑:お店では冷蔵庫やバックバーなどのスペースには限りがあります。カクテルではなく、そのまま楽しんでいただく場合は冷蔵庫の温度、もしくは常温での提供が基本になりますが、意図する提供温度にするためにベネンシアはもちろん、同じ銘柄でも冷蔵と常温と違う温度で保管していたものをブレンドして提供しています。

渡邊:違う温度帯のシェリーをブレンドすることで、提供温度の幅はかなり広がりますね。それだけこだわりを持ってシェリーを提供するようになった何かきっかけはありますか?

山﨑:実は私自身、もともとシェリーを好きではありませんでした。飲んで美味しいと感じたことがなかったのです。でも、シェリー・カクテル・コンペティションをきっかけにシェリーと向き合うようになり、美味しくないのは保管状態や提供温度に問題があるということに気づかされました。

バーで提供するシェリー

渡邊:そのシェリー・カクテル・コンペティションと翌年のベネンシアドール認定試験、どちらも優勝するという素晴らしい結果を手にしました。2度に渡り現地で開催されるシェリー・アカデミー・ツアーへ参加して、その造詣がより深まったのですね。

山﨑:現地で飲むシェリーは美味しいです。でもそれは当たり前なのです。現地を体感した後だからこそ、現地で飲んだシェリーと比較しても遜色のない、しっかりと管理されたシェリーの「美味しさ」を銀座のシェリー専門店で経験することが出来ました。「日本で飲んでもこんなに美味しい」が本当の美味しさなのだと思います。

渡邊:山崎さんのシェリーに対する思いを象徴するような、素晴らしい感性と考え方です。その美味しさを維持するために具体的に心がけていることはありますか?

山﨑:「日持ちする」という先入観を持たず、提供前にシェリーの状態を必ず確認しています。そのまま提供するのか、割材の多いカクテルのベースにするのか、など、美味しく飲んでいただくためにシェリーの状態に応じて使い分けています。

渡邊:シェリーに限らず他のお酒やフルーツ、食材と同じく「日々気にかけて向き合う」ことが美味しく提供するために必要ですね。

山﨑:まず興味を持ち、その上で特性を理解していくとシェリーはもちろん、カクテルやウイスキーなどの提供方法やアレンジの幅が広がります。
以前、海外のお客様から『オリーブのつけ汁を使用する「ダーティー・マティーニ」のようなカクテルをつけ汁を使わずに』というご注文をいただき、つけ汁の塩味ではなく、スパイシーなベルモットとマンサニージャのミネラル感を生かすアレンジを加えて提供し、大変喜ばれました。
また、ウイスキーもシェリー樽=オロロソ樽だけではなく、甘口のモスカテルやP.X.樽、ドライのフィノ・マンサニージャ樽など幅が広がってきています。シェリーを知ることでウイスキーの理解や提供方法にも生かすことが出来きるので、ぜひシェリーに興味を持って理解を深めていただければと思います。

渡邊::シェリーの理解を深めることでいろいろなアプローチが生まれ、カクテルやウイスキーの提供方法の「質」を向上させることができますね。
本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

 

 

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