シャトー・ムートン・ロートシルト1976

思い出のボトル

<第十八回>

レダイグ1992  10年
ブラックアダー

森田 哲也

 

In The Still
神奈川県横浜市中区野毛町2-100
☎ 045-261-0888
営業時間:18:00 ~ 02:00/日曜休み

 

思い出のボトル

絵:佐藤英行 文と写真:いしかわあさこ




 レダイグはスコットランド・マル島にあるトバモリー蒸留所が生産するピーテッドモルトの銘柄で、トバモリーの名が付くものはノンピートとして現在は位置づけられている。1798 年の創業から休業と再開を繰り返しており、以前は蒸留所生産のものがレダイグ、同じアイランズ(諸島)エリアに分類されるジュラやタリスカーとのヴァッテッドがトバモリーと呼ばれていた。このボトルは1993 年、グラスゴーのバーン・スチュワート社が買収する直前に蒸留されたものである。
「ボトラーズのウイスキーは加水してもどっしりとした感じのものが多いですが、これは麦の香りや樽香、ほのかなピート感が爽やか。全体的に朗らかなイメージで、新鮮でした」
 当時、森田哲也さんが勤めていたバーはボトラーズブランドのウイスキーを数多く取り揃えていた。ウッドフィニッシュが台頭してきた時期に、対極にあるようなシンプルさ。
この蒸留所へ行ってみたい――。森田さんは、5泊7日のスコットランド旅行へ出かけた。
 ローランドのオーヘントッシャン蒸留所から入り、車で移動するも思うように動けずトラブル続き。最終日の前夜にはハイランドのオーバンに辿り着き、翌朝にフェリーでマル島へ向かうはずだったが、パブで地元の人と意気投合して飲みすぎてしまった。起きると、既に出航後だった。
 2005年に独立開業してから、長期間の休みはそう取れない。あれから10年以上の月日が流れたが、スコットランドへは行けず仕舞いだ。楽しくも、苦い思い出。しかし、いつか必ずあのフェリーに乗ってマル島へ行きたいと思っている。きっと蒸留所も、首を長くして待っているはずだ。

 

 

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