ザ・マッカラン 12年

思い出のボトル

<第十九回>

ザ・マッカラン 12年
 

鈴木 裕介

 

Bar SALVAdOR
東京都新宿区高田馬場1-29-6 野菊ビル2F
☎ 03-3204-7222
営業時間:18:00 ~ 02:00/日曜休み
BLOGhttp://blogs.yahoo.co.jp/bar_salvador2005

 

思い出のボトル

絵:佐藤英行 文と写真:いしかわあさこ




 ドイツのボトラー、ザ・ウイスキー・エージェンシーの芸術的なラベルが並ぶバックバーは壮観だ。「バックバーはひとつの絵」と話す鈴木裕介さんは、アートと音楽に目がない。子どもの頃からスペインの画家サルバドール・ダリのファンで、自身の店名にしてしまった。2005年の開店前、毎日繰り返し聴いていたのがアメリカのジャズ・サックス奏者、ソニー・ロリンズのアルバム『This Is What I Do』。偶然にも、1曲目は“Salvador”だった。
 そこから鈴木さんが手に取ったのは、ザ・マッカラン12年。派手なアートラベルと比べると、シンプルでスタンダードな1本である。1990年代に流通していたもので、現行のものとはラベルも味わいも異なる。初めて勤務した中野のバーに置かれており、当時シングルモルトはたった2本しか取り扱っていなかったという。
「20年くらい前ですから、モルトを扱うバーはほとんどありませんでした。それまではバーボンを飲んでいたのですが、このボトルに出会って香りの良さと滑らかさ、華やかさに驚きましたね」
 薬品メーカーによって日本にマッカランが輸入され始めたのは、1970年代後半。シングルモルトのロールスロイスと称されるなど、人気の高い銘柄だ。それから鈴木さんは給料日に18年を、年に一度25年を飲むようになった。これを飲むために頑張ろう、という励みの一杯があるのはいい。
 12年から25年へ、徐々に熟成されて濃厚な色と深い味わいを帯びてくるマッカラン。鈴木さんにとって懐かしく、いまも憧れのウイスキーだ。

 

 

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