ポール・ジロー35年トレ・ラール

思い出のボトル

<第二十五回>

ボウモア6年
アイラフェス 2006

藤井 達郎

 

Eclipse first -Bar & Sidreria-
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思い出のボトル

絵:佐藤英行 文:いしかわあさこ




 2006年5月末、藤井達郎さんはスコットランド・グラスゴーへ向かう機内にいた。初めての海外旅行、偶然にも出発日は自身の誕生日。期待と緊張の中、長時間のフライトを経て空港に降り立つと、パスポートを見た入国審査官に声をかけられた。時差のおかげで、再び誕生日がやってきたのだ。
「誕生日じゃないか、おめでとう」
 やがて目的地のアイラ島に到着し、ボウモアの町を歩いていると、辺りはウイスキーと音楽の祭典「アイラフェスティバル」一色だった。どこか、バーはないだろうか……。藤井さんは、近くにいたひとりの青年に尋ねた。 「父親が経営しているホテルにバーがあるから、案内するよ」
 ボウモアホテルは、宿泊客で賑わっていた。無論満室だったが、屋根裏のような場所で良ければと泊めてもらうことに。訪れたことのない、異国の地。不安だった藤井さんを、現地の人々は温かく受け入れた。
 あくる日、ホテルからまもない場所にあるボウモア蒸留所へ。
 島では唯一エリザベス女王が訪問した蒸留所で、その際に歓迎のしるしとして作られた樽がある。フロアモルティングの体験をした後、アイラフェスティバルの記念ボトルを見かけた藤井さんは、これを土産にしようと考えた。
「6年と若いですが、レモンやフルーツケーキ、グレープフルーツの皮のような香りがあって美味しいです。残り1本の半分を切っているので、これがなくならないうちにまたアイラ島を訪れたいですね」
 ボウモアホテルは現在、代替わりして先の青年が経営者となっている。そう遠くない将来に、感動の再会があるかもしれない。

 

 

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