ボトルを鮮やかに彩る個性。 オリジナルラベルの魅力に酔う

ラベルデザインについて アーティスト 三浦 滉平 ボトルラベルの中でも特に心奪われるのが、様々なオリジナルラベル。
草分け的存在の「ディスティラリー・コレクション」をはじめ、各社が創意工夫を凝らしたオリジナルラベルはその美しさや独創性から、コレクターズ・アイテムとして人気を博しているものも多い。
様々なオリジナルラベルもまた、もう1つの主役であり、ボトルを鮮やかに彩る“顔”なのだ。
私たちを目で愉しませてくれるオリジナルラベルの個性と魅力とはなにかその仕掛け人たちにお話を伺う。

 

和の心を世界へ、独創性をすべての愛好家へ ― ラベルに描かれる名バイヤーの矜持。

(株)信濃屋食品 営業本部 酒販部 スピリッツバイヤー 北梶 剛氏北梶 剛氏 オリジナルラベル

 

Longmorn 1975 34年 エンジェルズシェア  オリジナルラベルを最初に手掛けたのは、2007年に入社後、翌年2008年に現在のバイヤー職に就いてからです。既に「ザ・チェス」のシリーズ化が決まっていて、当初は前任と相談してセレクトしていましたが、1人でやるようになったのは「ザ・チェス クイーン」の「クライヌリッシュ1989」。初の完全オリジナルは「インペリアル1995 ナブリオーネ」です。
 もともと入社前からシングルモルト、特にボトラーズに大変興味があり、いつか日本でもボトラーズブランドを作りたいという想いがありました。スコットランドや欧州ではショップが独自に厳選したプライベートボトルが盛んで刺激になりましたし、日本でもそういう取り組みをすれば、もっと美味しいボトルを購入しやすくなると思っていましたので、入社時に「ザ・チェス」が1stボトリングされたのは非常にタイミングが良かったですね。
 お気に入りは「イチローズモルト the GAME 2nd 羽生 2000-2011 Mizunara Heads Hogshead」。当時としては結構過激で、肥土さんに怒られないかドキドキしたのを覚えています(笑)。思い入れのあるラベルは「Longmorn 1975 34年 エンジェルズシェア」。思い描いていたラベルをデザイナーの阿部さんに相談したら、一発でイメージ通りのデザインが届き感動しました。
 和風デザインは、日本発のプライベートボトルを世界へ発信し、海外のファンが一目で日本発のボトルだと分かるデザインにしたかった経緯から見返り美人「トマーティン 1976」に「見返り美人」を採用しました。それが好評で、日本画や文化も同時に発信していくのも日本のショップの役割だと考え、コンセプトに合うタイミングで採用しています。斬新なデザインで言えば「Bowmore 1989 テンプテーション」ですね。スワロフスキーまでつけてとことん楽しませてもらいました(笑)。基本的にプライベートボトリングの仕事は全て1人でやっていますので、ラベルの作成も全て携わっています。
 ボトラーズのシングルカスクは、各社がセンスやコネクションを最大限に発揮して厳選を重ねボトリングされ、同スペックやシスターカスクでも味わいが異なる点が非常に興味深くコアな世界です。
 極端な話、ラベルで味が違って感じられるのがオリジナルラベルの魅力。そういうボトリングを手掛けることによって生産者の想いを感じることができるし、マーケットの拡大にも繋がることに非常に魅力を感じています。
 将来的には、1枚1枚手書きでロマーノ・レヴィのような芸術的なラベルもやってみたいですね。けど、難しいことは分かっています(笑)。

 

発売から変わらないシンプルで明確なコンセプト。オリジナルラベルへの老舗の答え。

(有)エイコーン 代表取締役社長 蔦 清志氏蔦 清志氏 オリジナルラベル

 

どんぐりラベル  オリジナルラベル制作は1999年頃でした。96年に創業して97年に免許が下りましたので、それから3周年の記念として制作したのが最初です。ラベルは今でも続く「どんぐりラベル」です。Ardbeg、Laphroaig、Lagavulinの3種類だったと思います。当時としては斬新な楕円形のラベルは、どんぐりをモチーフにしていて、今より少し小さく、どんぐりも1個で下を向いているラベルでした。今は3個で上向き、ラベルも記載する内容が増えるに従って大きくなりましたね。
 当時から海外ボトラーズが蒸留所から樽を買って自社ラベルを貼って販売していた歴史が頭にあったので、記念のラベルは自社ラベルを絶対にやりたいと思っていました。まだまだ国内でのオリジナルラベルの認知が低く、そんなこと不可能だろうと誰もが思っていた時代の話です。
 自社ラベルは、なるべくシンプルで分かりやすい素朴なラベルが好みなので、そういったデザインにしています。実際デザインがごちゃごちゃしていると蒸留所名が分かり難かったり、蒸留所からもっと分かりやすく表記するよう指示されたりすることもありました。フレンズ・オブ・オークもちろん自社ラベルで販売するわけですが、だからと言ってラベルで売るようなことは避けたいという気持ちがあります。
 いずれにせよコンセプトをしっかり持つことです。例えば「フレンズ・オブ・オーク」は木にまつわる昆虫や鳥や花などをメインモチーフにしています。昆虫は女性はあまり好みではないようですが(笑)。もともと当社の「どんぐりラベル」は当然オークですから、その流れでオークに対する敬意、人や自然、環境とともにある存在という意味が込められています。「どんぐりラベル」がエイコーンの名を大きく使用しているのに対して、「フレンズ・オブ・オーク」は自社の名前を小さくして「オークの友達」というコンセプトを前面に出しています。
ウイスキープラス 当社では昔から変わらない「どんぐりラベル」と「フレンズ・オブ・オーク」を軸にしています。恐らく大手の海外ボトラーだと数百樽の中から同じラベルで、あくまでもシリーズとして販売しているのかもしれません。しかし、私たちの場合は限られた条件の中で選出しているので、それぞれのウイスキーの個性に合ったラベルにしなければならないと考えています。小さな業者ほど選ぶ人の個性が強く出せるのです。そして色々な新しいラベルに挑戦するのも面白いのですが、軸がブレないことも非常に大切です。
 当社の商品は池袋の「ウイスキープラス」でも取り扱っておりますので、お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。

 

バーでの会話が弾むきっかけに。数々の名シリーズを生む、ラベルデザインの秘密。

(有)THREE RIVERS 代表 大熊 慎也氏大熊 慎也氏 オリジナルラベル

 

ザ・ライフ  数多くのサンプルをテイスティングして素晴らしいモルトに出会っても、割り当ての問題でなかなか多くを入れられない…。そんなジレンマがあったので、スリーリバーズを立ち上げた当初(2003年)から、オリジナルラベルを出したいという思いは抱いていました。原酒を樽ごと買ってオリジナルラベルとしてリリースすることで、本当にいいウイスキーをより多くのお客さんに飲んでもらうことができる。それに、僕たちの考えたラベルが、バーでの会話が弾むきっかけにもなればいいなと。
 そんな思いがあって、最初にオリジナルラベルをリリースしたのは2006年。当時はシリーズ化することは考えていなくて、「クライヌリッシュ」「ポートエレン」「ハイランドパーク」の3本を、それぞれに違ったラベルで出しました。
レディ&ユニコーン 現在は、「ザ・ライフ」や「ダイナソー」、「ダンス」、「レディ&ユニコーン」など、シリーズ物のオリジナルラベルも多いですが、そのきっかけとなったのが「ザ・ライフ」です。これはスリーリバーズのフラッグシップとなるシリーズで、長期熟成原酒のなかでもさらに厳選したモルトだけを詰めようと。ボトリングする中身についてはそうしたコンセプトで選び、ラベルのデザインは“一期一会”をテーマにしています。
 人が生まれて死を迎えるまでに色々な出来事があるなかで、人生を変えるくらいに感動するような瞬間。そんな瞬間との一期一会の出会いを、いいウイスキーとの出会いに重ねて。毎回、人生の大切なワンシーンを表現するラベルの写真を選ぶのは大変ですが、それが一番楽しい作業でもありますね(笑)。
ザ・ライフ  スリーリバーズが手掛けるすべてのオリジナルラベルの前提は、真摯に選んだ本当にいい酒だけを詰めること。そこに、ストーリー性や遊び心のあるラベルを付けることで、バーテンダーさんとお客さんとの会話が弾むきっかけを提供したい。「このラベルにはこういう意味があって」「面白いね、じゃあ飲んでみようかな」と。だから、すべてのボトルの裏面には、バーテンダーさんが味の説明をしやすいように、テイスティングノートも付けています。
 たとえば、他のボトラーズがボトリングしないような、パフューミー(香水のような香り)やソーピー(石鹸のような香り)な原酒をあえて詰めた「パフューム」や「ソープ」といったシリーズだったり、自由な発想でウイスキーファンの要望に応えられるのもオリジナルラベルの魅力。業界的に見ると原酒不足で厳しい状況ではありますが、これからも期待してもらっている以上のボトルをリリースしていきたいと思っています。

 

Bar空間の美しさをラベルに込めて。現代具象派の旗手が描く世界観。

画家 佐藤 英行氏佐藤 英行氏 オリジナルラベル

 

Classic of Islay  オリジナルラベルを手掛け始めたのは、ディスティラリー・コレクションのリリース前、97年~98年頃にLagavulinやTaliskerなどの「クラシック・シリーズ」の絵を描いたのが最初でした。確か97年のLagavulinが初めてのラベルだったと思います。きっかけは三浦滉平先生の御紹介を受けたことでした。当時、各地の名所などの風景画や人物画を100枚以上描いていて、それを先生に見ていただき、これならスコットランドの風景画も描けるのでは、ということで。
 これまで手掛けてきたラベルの中で、特に気に入っているのは「アーティスト・コレクション」ですね。すべてのBar空間の中に店主のこだわりや世界観が詰まっていて、それを描くのが面白いと感じています。
 私にとってオリジナルラベルを描く意義は、空間の美しさを表現したいという想いです。Bar空間を描く以前から室内空間の絵を沢山描いてきて、奥行きのある絵を描くのが自分に合っていたので、それをテーマとしていました。それで、たまたま「ディスティラリー・コレクション」がバックバーに並んでいるBarの風景を見たときに、単なるラベルデザインではなく「この空間を描きたい」と強く思うようになりました。その流れでBarの入口なども描くようになりましたが、それが大変好評いただき「これをラベルにしたい」と仰ってくださる方もいました。カウンターやバックバーだと、どうしても角度とか構図が似たようなものになってしまうんですよね。入口だとその店の個性が表現できるのかなと思います。ですので、内装だけではなく入口も含めて、そのBar空間を象徴するような絵を描きたいですね。
重鎮バーテンダーが紡ぐスタンダード・カクテル 「アーティスト・コレクション」シリーズは現在100店を超えていて、将来的に一冊の本にまとめる話も出ています。またSaketryで現在連載中の「思い出のボトル」も書籍化したいと思っています。これまで「ディスティラリー・コレクション」や「アーティスト・コレクション」を手掛けてきたわけですが、他にも様々なアプローチから描いてみたいですね。例えば、日本各地の名所や東京の風物をモチーフにしたもの、花だけをメインにしたものや動物だけを…など。ボトルそのものをメインにするのも面白いと思います。
 現在出版されている「重鎮バーテンダーが紡ぐスタンダード・カクテル」の絵は、ライターのいしかわあさこさんが温めていた記事を書籍化するにあたり、お話をいただきBarやカクテルや人物も含めて122枚の作品を掲載しています。嬉しいことに多くの反響をいただき、この仕事を通して知り合った友人は、お寺の朱印帳のように各Barを訪ねてマスターからサインを貰っているようです(笑)。

 

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