グレンタレット1966

思い出のボトル

<第二回>

グレンタレット1966
 

高橋 克幸

 

もるとや 池袋店
東京都豊島区東池袋1-8-6 DKY12 ビル1F
☎ 03-5952-9277
営業時間:16:00 ~ 04:00(土15:00~04:00、日・祝15:00~02:00)/無休
http://www.morutoya.com/

 

思い出のボトル02

絵:佐藤英行 文と写真:いしかわあさこ




 グレンタレット1966は、漆黒のフロスティボトルに蒸留年と瓶詰年がローマ数字で表記された、心惹かれる一本だ。映画のクレジットなどでもこの表記は使われているが、蒸留は「MCMLXVI」、瓶詰年は「MCMXCIII」と記されており、それぞれ1966、1993年を表している。
 グレンタレットは1775年に創業し、現存する蒸留所では最も古い。2万8899匹のネズミを捕まえてギネスブックに掲載された、ウイスキーキャット「タウザー」も有名だ。ウイスキーの原料となる大麦を狙って、ネズミや小鳥がやってくるのを防ぐために、蒸留所では猫を飼っていた。
 「もるとや」店主の高橋克幸さんは、このボトルがリリースされた頃、池袋駅西口にあったバー「椿」に勤めていた。まだシングルモルトに傾倒する前で、数年後にモルトバーをオープンするとは思っていない。ところがある日、モルト好きの客と共に京橋まで飲みに出かけた。店の名前は「宝鏡堂」。お互い何杯かレアモルトを飲んだが、グレンタレットのクリーミーで奥が深い味わいに、ほかのモルトの味を忘れてしまった。この出会いが、1997年にオープンした「もるとや」のはじまりになる。
 看板の文字は、高橋さんのご長男が小学1年生のときに書いたもの。平たい絵の具の筆を持たせて、半紙に何枚か書かせてみたところ、なかなか味のある仕上がりになった。そんな場面を想像すると、思わず微笑ましくなる。マニアックな店名とバックバーに広がるシングルモルトに、最初は構えてしまうかもしれないが、その文字と高橋さんの飾らない人柄が肩の力を抜いてくれる。

 

 

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