ビーフィーター クラウンジュエル

思い出のボトル

<第十一回>

ザ・フェイマスグラウス
ファイネスト

井口 法之

 

ガスライト銀座
東京都中央区銀座8-7-11 ソワレド銀座第2 弥生ビル6F
☎ 03-3574-7633
営業時間:18:00~03:00(土17:00~23:00)/日・祝休み
http://www.bar-gaslight.com/

 

思い出のボトル11

絵:佐藤英行 文:いしかわあさこ 写真:相原一晴




 スコットランドの国鳥である雷鳥は、年間を通して同じ場所で過ごし、季節による移動をしない留鳥だ。夏は黒褐色、冬は純白と羽毛の色を変化させる。この雷鳥をラベルに据えた「ザ・フェイマスグラウス」にも「ザ・ブラック・グラウス」「ザ・スノー・グラウス」といった銘柄があり、その色も黒と白だ。
 スタンダード品として知られる「ファイネスト」は、スコットランドの荒野に生息する赤い雷鳥が描かれ、現地で常にトップシェアを誇っている。発売当初の1896年には「グラウス」と呼ばれていたが、その人気から1905 年に「ザ・フェイマス(あの有名な)グラウス」と名前を変えた。20年ほど前、駆け出しのバーテンダーだった井口法之さんは、この赤い雷鳥の逸話を客から聞き、感銘を受ける。
 「暖かい春も極寒の冬もひとつの場所に留まって、季節に応じて羽毛の色を変えながら凌ぐ姿は、いつも変わらずカウンターに立ち続けるバーテンダーと相通ずるところがあります。『お客様の喜びや悲しみを分かち合えるサービスマンになりなさい』とお客様に教えられました。その言葉を胸に、ずっと飲み続けています」
 現在、井口さんはガスライト霞ヶ関本店、銀座店、四谷店のオーナー兼チーフバーテンダーで、いずれもウイスキーベースのカクテルにはファイネストを使用している。マッカランやハイランドパークなどがブレンドされ、フルーティでなめらか。後味がすっきりとしたブレンデッドウイスキーで、どのカクテルにもよく合う。
 100年以上の歴史を歩み続けてきた雷鳥が、今宵も井口さんとガスライトを見守っている。

 

 

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