駒ヶ岳10年 シングルモルト

思い出のボトル

<第二十三回>

ラフロイグ10年
 

石川 伸彦

 

BAR Sheep
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☎ 045-262-1614
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思い出のボトル

絵:佐藤英行 文:いしかわあさこ




 これを美味しいと感じるなんて、僕はへそ曲がりだろうか?
 近所のバーでマスターに勧められ、初めてシングルモルトを飲んだ石川伸彦さんはボトルを眺めながら考えていた。海藻や薬品のようなフレーバーがして、確かに変わった味だ。でも、この味を生み出す蒸留所はどんなところなんだろう。興味は尽きず、やがてバーで働き始めた石川さんは先輩に誘われてスコットランドの島巡りツアーに参加することになった。大倉山のバー「グローリー」の宮内誠さんが主催した企画だった。
 ハイランドパークとスキャパ蒸留所があるオークニー島をはじめ、スカイ島はタリスカー、ジュラ島はアイル・オブ・ジュラと巡って念願のラフロイグ蒸留所があるアイラ島へ。
 もしかしたら、現地のピートや麦芽がもらえるかもしれない……。封のできるビニール袋をいくつか持参していたが、肝心のラフロイグ蒸留所へたどり着いた時にはすべて使ってしまっていた。

「私のを使って。ここに、来たかったんでしょう?」
 大森のバー「テンダリー」の宮崎優子さんから声をかけられ、御礼を言うとピーテッド麦芽を袋に入れた。すると、ハンカチにそれを包む宮崎さんの姿が目に映った。先輩の懐の深さと優しさが、身に染みた瞬間だった。
「初めてお会いするかたが多くて、しかも先輩ばかり。スコットランドへ来ることができて舞い上がっていた僕に、とても親切にしてくださいました。本当に、良い思い出ばかりで……。いま思えば、僕にとってこの旅がバーテンダーとしての第一歩だったんです」

 

 

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