ポール・ジロー35年トレ・ラール

思い出のボトル

<第二十四回>

ポール・ジロー35年
トレ・ラール 

谷嶋 元宏

 

Bar Fingal
東京都新宿区神楽坂3-1 美元ビル1F
☎ 03-3235-2378
営業時間:19:00~02:00/日曜・祝日休み

 

思い出のボトル

絵:佐藤英行 文:いしかわあさこ




 ブドウの栽培から発酵、蒸留、熟成、瓶詰まですべての工程を自家で賄う貴重な生産者、プロプリエテールのひとりにポール・ジロー氏がいる。フランス・コニャック地方は最高峰のクリュとして知られるグランド・シャンパーニュ地区、ブートビル村で1800年代後半よりコニャックを生産し、伝統を守り続ける姿に魅了された飲み手は数知れない。神楽坂でバーを営む谷嶋元宏さんも、そのひとりだ。

 高田馬場の老舗カフェ「コットンクラブ」のバックバーに、それはあった。
1杯800〜1,000円という価格帯の中で、3,500円の高値がつけられている。大学生だった谷嶋さんは、一緒に飲んでいた先輩に嘆願した。
「ご馳走して頂けませんか、と。こんなことを言ったのは、後にも先にもこれきりですね。古谷三敏さんの漫画に登場したボトルで、いつか飲みたいと思っていました。蒸留酒を飲んで、初めて凄いと感動しましたね」

 大学院へ進んだ後、化粧品会社の研究所、高校教員と勤め、1999年にバー「フィンガル」を開店。ソムリエであり、ウイスキーに関するセミナーの講師として活躍する谷嶋さんが厳選するワインやウイスキー、そしてブランデーが並んでいる。国内で特に情報の少ないブランデーへの熱意は、人一倍だ。

「ウイスキーは熟成を経て着飾り、綺麗になっていく印象がありますが、ブランデーはある程度着飾ったら徐々に飾りを脱いでいく。素に戻っていくにつれ、ブドウそのものを感じられるようになるんです。そんな魅力的な一杯を、是非多くの人に味わって頂きたいですね」

 

 

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