涌井さんは、長く帝国ホテルのエグゼクテイブ・ソムリエをお務めだったとお聞きしていますが、こちらのお店に来られる切っ掛けは何かあったのでしょうか?
涌井氏: 私は63歳の定年まで帝国ホテルで勤めていたんですが、あるフレンチの巨匠から日本進出の手伝いをしてくれないかと頼まれて、しばらくミシュラン2つ星のフレンチレストランの立ち上げに携りました。
その後、シャンパーニュの大使をやっていた共通の友人を通じて、今のオーナー、ラーシェ・ベルトラン社長と知り合って、フランスブルターニュの食文化をもっと日本の方にお伝えしたいと言う思いに共感して、オーナーからお声掛け頂いたのが切っ掛けです。
街場のお店と帝国ホテルとは本当に違うので最初は本当に苦労しましたが、此方に来られるお客様も、私のことをよく知っておられる方も多々いらっしゃったり、お店のスタッフにも恵まれて、大変良くして頂いております。
こちらはシードル専門店とお聞きしていますが、シードルの専門店を出そうと思った理由は何だったのでしょうか?
涌井氏: こちらのお店は、オーナーが日本でシードルを普及させたいという思いでお店をオープンしました。シードルも20種類以上をご用意して、ブルターニュの家庭料理であるガレットなどに合う、こだわりのシードルなどを出しております。ただ実際には、シードルのお酒だけではなく、本格的なブルターニュのフレンチ料理と、良質なワインも取り揃えておりますので、ある程度お安く、どなたが来ても本格的なディナーを気軽に楽しむことができるようにしております。
そもそもシードルはフランスでは、どのような時に飲まれますか?
涌井氏: シードルはシーンを選ばず、ブルターニュでは食事の時でも、そのままでも手軽にシードルが飲まれています。日本で最初に乾杯をする時に飲むビールと同じ様に飲まれていると思います。
元々ブルターニュ地方は、フランスの北部ワインづくりの北限のさらに北になりますので、ブドウの替わりにリンゴの生産が盛んで、昔から大人から子供まで、ワインの替わりにシードルが飲まれてきました。日本でも長野や青森のように、ブドウよりリンゴの生産が適していたためランビック(りんごの蒸留酒)やシードルの様な、お酒が定着していったんだと思います。ただ、ブルターニュで造られるリンゴは、日本の食用のリンゴとは違って、渋いものから酸っぱいもの、甘いものなど200種類以上の品種があって、シードルの深い味わいをより楽しめるように作られています。
ブルターニュ地方で誕生したとされるガレット料理ですが、昔から家庭でシードルと一緒に楽しまれていたのですか?
涌井氏: 先ほどの話とつながるんですが、ブルターニュはフランス北部の寒冷の地ですから、作物も麦がなかなか育たなかった事もあり、寒冷の地でも育ちやすい、そば粉を盛んに栽培していました。そう言った背景もあり、そば粉を使った食文化が発展していって、現在のガレットなどの代表的なブルターニューの家庭料理が生まれたと思います。
ブルターニュはドーバー海峡と北海に面していますのでオマールブルーなどに代表される海の幸も豊富で、農産物から乳製品まで、フランス料理には無くてはならない食材を供給している産地でもあります。
涌井さんおすすめのシードルは?
涌井氏: シードルはアルコール度数が平均的に4度~5度ですが、私の個人的な意見ですけど、アルコールの発酵が過ぎるとリンゴの果実の風味が消えてアルコール感が強くなってしまい、シードルらしさが少し失われてしまっていると思っています。
そう言った意味で、今回ご紹介するシードルは、先ほどお話した200種類以上のリンゴの品種から、それぞれ適したリンゴの品種を組み合わせて、それぞれのタイプを厳選し、リンゴを皮ごと絞った一番絞りで造っています。ですから日本のリンゴの果肉だけを使用して造っているシードルとは違って、リンゴの渋みや甘味と言った深い味わいを楽しめるシードルを楽しむことができます。
またお勧めの楽しみ方は、甘口タイプはクレープやタルトタタンなどと合わせるといいと思います。中辛口と辛口タイプは他の魚介の料理にも合わせやすいです。 飲む際は7度~8度位に冷やすと、リンゴの風味と喉越しの爽快感をお楽しみ頂けます。
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