2007 Chevalier Montrachet Les Demoiselles / Dmaine Louis Latour

唯一無二のワイン名醸地ブルゴーニュ。「ルイ・ラトゥール」は、この地で家族経営を守り続けている世界的に著名なワインメーカーです。その歴史は、1731年に一族がブルゴーニュの中心コート・ド・ボーヌでブドウ畑を所有し、ブドウの栽培と樽造りを手がけたことに始まります。1768年にアロース・コルトン村へ移住した一族は、フランス革命直後の1797年に、醸造家かつネゴシアン（ワイン仲買人）として創業を迎え、まだ残る革命の余波をもろともせず、徐々に自社畑を広げていきました。

成功への大きな契機となったのは、4代目当主による大胆な改革でした。19世紀後半、彼はヨーロッパのブドウ畑がフィロキセラ（畑を食い荒らす害虫・アブラムシ）で壊滅状態になった際、従来のピノ・ノワール種に替え、コルトンの丘にそれまで誰も想像さえしなかった、シャルドネ種の苗木を植樹し、後にブルゴーニュの2大白ワインのひとつと謳われた「コルトン・シャルルマーニュ」を誕生させたのです。こうした努力と成功を経て、「ルイ・ラトゥール」は現在、コート・ドール最大規模のグラン・クリュ（特級畑）を所有するブルゴーニュ屈指の造り手にまで成長を遂げています。
ルイ・ラトゥールには、自社畑のブドウから造る「ドメーヌ・ルイ・ラトゥール」と他の生産者からブドウを買い付けて造る「メゾン・ルイ・ラトゥール」のワインがあります。ボトルの外観は一見同じようですが、ボトル上方に貼ってある円形のシールを見れば、どちらか書いてあります。こちらの「シュヴァリエ・モンラッシェ　レ・ドモワゼル」はドメーヌもの。

レ・ドモワゼル（Les Demoiselles）は直訳すると「2人娘」。1800年からこの区画を所有していた当時のボーヌ村長ジャン・バティスト・ヴォワイヨ氏が、1820年に2人の娘に相続したのが名前の由来です。このレ・ドモワゼルは斜面の上部（特級シュヴァリエ・モンラッシェ）と下部（ピュリニー・モンラッシェ1級カイユレに含まれる）に分けられ、特級の区画を所有しているのはルイ・ラトゥールと、同じくブルゴーニュの大手老舗生産者「ルイ・ジャド」の2社だけです。合わせて1.02haしかないこの特級区画は、ルイ・ラトゥール［0.50ha］、ルイ・ジャド［0.52ha］に分けられ、それぞれの生産量は極僅かです。

シュヴァリエ・モンラッシェはモンラッシェ特級群の中でも最も強いミネラルを持ち、まるで強靭な鋼のようです。間違っても早飲みしてはいけないワインのひとつですが、品質のレベルの高さは最も安定感があり、時にはモンラッシェを凌駕するほどです。実際の経験上、モンラッシェは当たると凄まじいですが、外れると「あれ？？」というものもあります。それに対してシュヴァリエ・モンラッシェはいつでも凄みを感じられ、このクラスのワインをたくさん経験された多くの愛好家は、モンラッシェよりもシュヴァリエ・モンラッシェに惹かれています。ただ、モンラッシェ同様、真の姿を拝むにはかなりの時間が必要で、やはり“モンスター・ワイン”です。
しかしルイ・ラトゥールは白ワインの名手で、若い内からも香りや味わいなどが出てきやすい比較的外向的な造りをしています。今年2018年に同じくルイ・ラトゥールの2007年の特級モンラッシェを飲む機会がありましたが、正直まだまだ飲み頃は先ではあるものの、香りや味わいなど“凄み”を感じることはできました。あと10年以上かかるでしょうか・・・。こちらのシュヴァリエ・モンラッシェも同じようなことが言えるかと思います。
そして2007年はブルゴーニュの白ワインの偉大なヴィンテージ。今飲み頃に入っているのは1級までで、特級はまだまだ先でしょう。しかし、偉大な造り手の偉大な畑の偉大なヴィンテージの大変希少な白ワイン。飲み頃になったときは、間違いなく感動級のワインとなるでしょう。