ジェムソン


ミッシェル・クーブレイ。熟成の魔術師といわれた男。


スコットランドの最北端。
 この地に一九八五年、ミッシェル・クーブレイは自分が信じる最高のウイスキーへの第一歩を標した。彼のシングルモルト・ウイスキーに対する信念は、元来モルト・ウイスキーの概念を根底から変える革命ともいうべき挑戦でもあった。
 ベルギーのブリュッセルに生まれ、フランスのブルゴーニュ地方に本拠地を置き、ワイン商としてワインの品質を見極めてきた。彼は、クオリティーに対して一点の妥協も許さない哲学の持ち主であった。そして、彼の猛烈な「こだわり」への欲求は、ワインという枠をも超え、ウイスキーの聖地といわれるスコットランドにまで辿り着いた。

熟成の魔術師
 彼はワインビジネスで培ったコネクションを生かし、スペインのヘレスで、シェリーを扱うプロ達から絶大な信頼を受けている醸造元から、最高のウイスキーを造る上で欠かせない、高品質のシェリー樽を入手する。スコットランドでクリームシェリーのスパニッシュオーク樽で三年間寝かせ、フランスのブルゴーニュ地方「ボーヌ」にある自身のカーヴにおいて、17年間貯蔵し終えた高品質のシェリー樽を厳選し、樽に移し変えて更に十数年間熟成を行った。そして、彼のカーブのもとでひっそりと静寂な眠りから覚めたこのウイスキーは、奇跡とも言うべき至上の熟成を遂げ「シングル・シングル・ベレー・バーレイ」として完成される。
 大麦の栽培から熟成までを、自らの手で一から造り始めた、彼のあくなき「こだわり」への挑戦は、まさに、誰にもまねする事が出来ない「究極のこだわりのウイスキー」として異才を放っている。

 味わいを決定づける要因は「樽」
 彼の残した足跡はあまりにも異色で、ウイスキーの世界に大きな変革をもたらした。それは、まるでワイン造りのように、原料の品種から造り手の生産者までを重要視した、フランス固有の「テロワール(土壌と風土)」ともいうべき発想をウイスキーの世界に持ち込んだことによる。商業的な生産性を一切無視し、今までとはまったく異なるウイスキーの新境地を切り開いた。しかし、彼の本当の試みは、ここでは終わらなかった。ウイスキーが持つ「熟成という魔法」にその答えを見出していた。自分の信じるウイスキーを造る上で、ひとつの大きな確信があった。モルトの原料から徹底的にこだわり最終的に至った答えは、「ウイスキーの味わいを決定づける要因は蒸留所ではなく、95%は樽そのものが決める」という信念にたどり着いた。そして時は流れ、2013年8月17日永眠。享年85歳。

ボトルの1本1本には彼のすべてが詰まっています。熟成に生涯を捧げた男の永遠の美学。

 

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