ロウカスク


無濾過。まさに、汲みたての味。



 ウイスキー鑑定家のバイブル「ザ・モルト・ウイスキー・ファイル」の著者として知られるロビン・トチェック(下写真)によって、1995年に創業したウイスキーを中心に取り扱うボトラー。
 同社の製品は様々なブランドがありますが「樽出しのシングル・モルトが本来持っている深さを、あるがままに味わってもらいたい」という彼の哲学により、創業当初からすべて冷却濾過処理をせず、カラメル着色も行わずにボトリングされています。そのため、ボトリング行程で失われる量は1%未満。この数値は、本場スコットランドでも特筆すべき例外的な低さであり、樽の中の状態に極めて近いものです。
 現在、英国にオフィスを持ち、英国国内はもとよりヨーロッパ各国、アメリカ、日本、台湾などに出荷され、モルト愛好家から高い評価を得ています。モルト愛好家の夢の一つに、「気に入った樽の注ぎ口から、直接グラスに注いで味わう」というものがあります。従来、一樽買いでもしない限り、そのような行為は出来ませんでした。
 しかしながら、同社の主力商品である「ロウカスク」シリーズは澱(沈殿物)も含めて、そのままの状態でボトリングしたシリーズで、当然のことながらすべてカスク・ストレングスです。
 「取り除くのは、大きな木片だけ」というポリシーで生み出される製品は、無濾過・無加工を基本とするため、ボトリング行程で失われる量は、更に低くなり全体のほんの0.5%未満という驚くべき数値を誇ります。
 このロウカスクを味わうという行為は「熟成庫で寝かされている原酒」を自然そのままの状態で味わうことに他なりません。まさに、モルト愛好家の夢を実現させた1 本と言えるでしょう。


ロウカスク。それは樽から直接くみ出したままの状態をキープした「唯一無二」のウイスキー。
 大麦麦芽を蒸留し造られた無色透明のまだ荒々しい「ニューポット」を樽の中で長い間寝かし、熟成させた原酒は、芳醇でまろやかな香りをまとう琥珀色のウイスキーへと生まれ変わります。しかしながら、その樽に寝かされたウイスキーを「そのままの状態で味わう」ということは、なかなかできるものではありません。なぜなら、普段私たちが目にしているお酒は、様々な人の手に掛かり「見た目や一定の品質に味を整える」といった加工を経た製品だからです。
 特にオフィシャルなどの一般的な製品では、まず「①熟成によって樽ごとに異なる味を均一化」をします。また、「②濁りを防止するため冷却濾過処理」を行い、最後に「③お酒の見た目を整えるために着色(カラメル処理)を行い、ボトリング」といった工程を通らねばなりません。ここで問題なのは、透き通った美しい琥珀色の「商品」に生まれ変わらせるために、冷却濾過処理が欠かせないと言うことです。
 本来、樽で熟成された原酒には、様々な香味成分が溶け込んでいます。これらは、ウイスキーのうま味や香りの要素で、味を決定づける重要なファクターとなります。しかし、温度が低くなると飽和状態となり濁りや澱が生じるため、見た目が非常に悪くなってしまいます。そのため、樽から汲み出した原酒をあらかじめ約0~5度まで冷却し、沈殿物の結晶が大きくなったところで、目の細かいフィルターで濾したものを製品化することで、美しい商品に生まれ変わらせています。これらの加工過程を冷却濾過処理といいますが、しかし、それは「ウイスキーが本来が持っている、コクやうま味を捨て去る」ことと同じ事です。言い換えると、「味よりも、見た目重視」と言う考え方で造られている事になります。
 「ロウカスク」とは、そうした従来の「見た目」を重視した商品ではなく、限りなく「味」を重視した製品、「本来のあるがままの味」を信条においたブランドなのです。


オフィシャルとボトラーズの違い、ボトラーズとロウカスクの違い。
 それに比べ「ボトラーズ物」では、前述の「冷却濾過処理」に対して「ノンチルフィルタード」といい、冷却処理を施していないウイスキーが現在主流となっています。これは、見た目よりも味わいを重視していますが、そうはいっても、目の細かいペーパーフィルターで濾過することには変わりありません。
 冷却濾過をしていないだけで、程度の差はあれ、やはり本来の味を損なう事になります。
 「ロウカスク」シリーズのこだわりは、「樽の原酒をそのままのカタチで味わってもらいたい」との思いから、限りなく目の粗いフィルターを使い、大きな木片を取り除く以外の濾過処理とカラメル処理は一切行っていないということです。その結果、「ロウカスク」製品の瓶の底には、(上写真)黒い炭が入った状態でボトリングされます。これは、チャー(樽の焦がし)によってできた樽の表面が、長い熟成期間の末に剥離し、分離した物です。
 使用しているフィルターは、これらの粒子が通り抜けるぐらいの目の粗さのフィルターを用いているという何よりの証で、味わいは「無濾過」というにふさわしいコクと香りをもっています。そして、ここまで無濾過を謳っているブランドはブラックアダー社の「ロウカスク」シリーズ以外は無く、世界でここだけの唯一無二の存在なのです。